SAH Sports Column

光り輝く未来の女子野球のために

 広島の皆さん,はじめまして!

一般社団法人全日本女子野球連盟の代表理事を務めております,山田(やまだ)博子(ひろこ)です。


 広島カープ愛溢れる広島の方々にぜひ知っていただきたいのが,女子野球の大いなる魅力。

 近年,女子がプレイする野球が全国的に広がっているんです。


 当連盟では,女子野球日本代表の選考や編成,全国大会の企画運営,普及活動など,女子野球に関するあらゆる業務を手掛けています。今回は,広島の街を巻き込み,新たな旋風を巻き起こすであろう「女子野球」についてお話させてください。

世界ナンバーワンの強さを誇る“マドンナジャパン”

 皆さん「マドンナジャパン」ってご存じでしょうか?女子野球日本代表の愛称が「マドンナジャパン」なんです。もしかしたら初めて聞いた方もいらっしゃるかもしれませんが,「マドンナジャパン」という愛称をより身近に感じていただけると嬉しいです。ここからは親しみを込めて「マドンナジャパン」と呼ばせていただきますね。

 マドンナジャパンが,女子野球W杯で6連覇の偉業を達成。近年,このニュースを耳にした方もいらっしゃるのではないでしょうか?事実,マドンナジャパンは,世界ランキング1位を維持し,敵なしの強さ。メディアで女子野球選手が取り上げられる機会も増え,徐々に認知されていると感じ,うれしく思う日々です。


 女子野球競技人口も,着実に増加。2016年に約1万5千人だった競技人口は,2019年には約2万1千人まで増えています。引き金となったのは,小学生の全国大会「NPBガールズトーナメント」が2013年より開催されたことや,女子高校野球部の急増,マドンナジャパン飛躍の影響であると考えています。


 つまり,「女性が野球を諦めない環境」が徐々に整ってきたことが大きな要因になります。


 昔から,野球を楽しむ女の子はたくさんいました。少年野球チームの中で,エースで4番として活躍する女の子も多く見受けられます。しかし,中学生になると男の子と体格や体力の差が顕著に出始め,仕方なく野球を辞めて別競技に転向する道しか,女の子にはなかったのです。


 しかし現在,「女性も野球に対して夢を持てる」喜ばしい時代が到来しています。

女子野球を世の中の当たり前に

 女子野球を取り巻く環境は良い方向に向かいつつありますが,まだまだ十分ではありません。当連盟では,「女子野球を当たり前の競技・文化にすること」を大きな目標に掲げ,あらゆる課題を解決しようと日々奮闘しています。


 例えば,全国の球場のベンチ裏に女子トイレを作ること。野球自体,女子が行う想定ではなかったため,ベンチ裏に女子トイレがない球場が多々あるのです。もちろん女子用の更衣室もありません。当たり前のように女子選手が野球を楽しめる環境を自治体と共に整備しています。


 そして,各関係団体や当連盟において,優秀で素質がある女性は積極的に理事に採用したいと考えています。女性理事5割を目指し,そのための人材育成にも力を注いでいます。


 歴史や伝統を重んじる野球界。少し敷居の高さやルールの厳しさを感じる人もいらっしゃると思います。そのような中で比較的自由に活動できることも女子野球の魅力です。選手がテレビやバラエティ番組に出ても問題ありません。女子高校野球においては,SNSでの自分発信も,学校が許可すれば可能です。使用する野球用具についても,野球規則に則っていれば特段の制限はありません。

 バッドのグリップのテープがキラキラとかわいいピンク色でも問題ないですし,最近では,社会人の選手で,つけまつげやアイラインをひくなど,簡単なメイクをして野球をする選手も見かけます。競技に影響がでない部分に関しては,基本は規則で縛るような形を取っていないんです。


 最近では,スタジアムアナウンスを美声のプラスイメージを持つウグイス嬢と,場内を沸かすスタジアムDJのコンビネーションで行うなど新しい取組を実施しており,とても好評です。今シーズンから,ウグイス嬢とともに,さらにアニメの声優さんを入れる予定です。ノリのいい音楽もかけて,球場を盛り上げます。グラウンドへの入り方も整列ではなく,ベンチから1人1人出てくる方式など,選手達のリクエストや声に耳を傾け取り組んでいきます。目指すのは,見る方もプレイする方も楽しめる女子野球。


 私は,自身が野球をプレーしてきたわけではなく,いわゆる野球文化,野球界のしきたりの中で育ってきたわけではありません。ですので,こんなことはできないか,こんなことをやってみよう,と前例に縛られない発想を常に心がけています。

「好きじゃけん 女子野球 広島県!」が誕生

 広島でも,女子野球に対する受け皿が増えています。6年前に,県立佐伯高等学校が県内唯一の女子硬式野球部を設立されました。そして,この2021年4月には山陽高等学校に女子硬式野球部が創部され,2022年には広陵高等学校にも女子硬式野球部が創部されると伺っています。


 そして,女子野球を通じて地域のシティプロモーションやまちづくりを推進する「女子野球タウン認定事業」では,廿日市市と三次市を昨年12月に認定いたしました。2021年6月現在で,全国で8つの自治体を女子野球タウンとして認定しておりますが,同じ県内に2つの自治体が認定されているのは,現在,広島県だけなんです。


 廿日市市は,佐伯高等学校の女子野球部の活躍はもちろん,地元の企業が, 2022年に中四国初となる女子硬式野球の企業チームを創設する構想を打ち出されています。また,世界遺産である厳島神社をはじめとした大きな観光資源を持っています。そこで,女子野球と地域資源を掛け合わせたシティプロモーションに取り組まれています。

   (マツダスタジアムで行われたアンバサダー就任式)

 三次市は,「三次きんさいスタジアム」という県内でも有数の球場を有しており,この球場を中心として,この秋に西日本からたくさんの女子野球チームが集まる大会を開催いたします。みなさんの方がよくご存じだと思いますが,「三次きんさいスタジアム」の周辺には,美術館やワイナリー,バーベキュー広場,まだまだ色んな施設があるので,プレーする選手だけでなく,全国から応援に来られた方々にも楽しんでいただけるものと思っております。


 そして,これら両市に広島県も加わり,『好きじゃけん 女子野球 広島県!』をモットーに,県全体で女子野球を応援し盛り上げていきます。


 まずは,その活動の一環として,広島県・中四国女子野球アンバサダーに広島東洋カープで選手・コーチとして活躍した浅井樹さんと,元女子プロ野球でプレーし,現在MSH医療専門学校女子硬式野球部の部長である野々村聡子さんを任命いたしました。浅井さんには,指導をメインに行っていただき,技術のレベルアップを図ります。野々村さんには野球教室はもちろん,当連盟の広島支部を立ち上げ,先頭に立っていただき,中四国女子野球連盟へ発展させ,リーグ戦も行えるよう準備も進めていきたいと思っています。

 県内に2つのタウンがあり,そこにさらに県の支援もある,これは多彩なスポーツが盛んな広島県ならではの強みですね。広島県の女子野球がこれからどのように展開していくのか,今からとても楽しみです。


 女子野球は全国へと広がっています。私たちは各自治体の方たちと,地域が持つリソースで,女子野球と一緒に活性化できるプランをお互いに考えています。女子野球が普及し,競技人口が増えれば,まちの知名度が上がります。地域の特産物等を選手たちがPRすることで,大きな収益を得られることもあるでしょう。女子野球を通じて女性の地位も向上し,新たな雇用も生まれます。女性が輝く舞台作りに,私たちが少しでもお手伝いできれば,非常に嬉しく思います。

夢の舞台である甲子園へ,そしてNPB球団女子チーム増加へ

  (第15回全日本女子硬式クラブ野球選手権大会で初優勝)

 今夏,甲子園球場で女子の高校野球選手権大会決勝が開催されることになりました。女子野球界にとって歴史的な1ページとなります。現役の女子球児はもちろん,現在指導者となった過去の女子選手が,甲子園の地に立てるチャンスを実現できました。


 そして,野球好きのお父さんが,息子ではなく,娘に甲子園に連れてってもらえる時代になりました。将来,「俺のかあちゃん,甲子園球児なんだぜ!」って言える子どもたちが出てくるわけです。女子野球の輝かしい未来への一歩となると思っています。

 女子野球の可能性は無限大です。次の目標はNPB球団による女子クラブチームを増やしていくこと。現在,埼玉西武ライオンズと阪神タイガースによる女子クラブチームが創設されていますが,将来的には他の球団にも作っていただきたいと思っています。広島東洋カープさんも応援してくれているので,次の展開が楽しみですね。


 今後はSNSによるプロモーションも強化していきます。選手たちの素顔にフォーカスしたYouTube番組や,連盟公式インスタグラムを立ち上げる予定です。TikTokで,ショートムービー配信もぜひやりたいですね。こういった活動に自由に取り組んでいけるのは,まさに女子野球ならではだと思います。

 私は根っからの野球人,というわけではありません。アメリカでの留学から帰国後,たまたまスポーツエージェント会社に就職し,何も知らないまま野球の世界へ入りました。


 2004年の女子野球大会で,アメリカチームの通訳を担当し,そこで出会った女子野球選手たちのキラキラした輝きに魅了されたことを鮮明に覚えています。今より競技人口が少なく,女子野球なんて誰も知らない過酷な状況の中で,とても楽しそうにプレイする選手たちの姿に感動を覚えました。



 今後も当連盟の代表理事として,また私個人としても「閉ざされない女子野球」のために活動していきたいと思っています。どんなスポーツであれ,時代にマッチしたプランを考えることが大切です。そして「今」だけではなく,必ず「将来」を見る。これから30年~50年後の子どもたちが笑顔でいられる未来を想像して動くことが,私のミッションだと思っています。




【山田博子 Yamada Hiroko】

一般社団法人全日本女子野球連盟 代表理事

静岡県浜松市出身。米国ワシントン州の大学に留学後,日本で通訳として活動開始。スポーツエージェント会社に就職し,メジャーリーグ放映権やアスリートマネジメントを担当する。2004年に日本で開催された女子野球の国際大会に通訳を依頼されたことから女子野球と関わるようになる。現在は同連盟理事他,世界野球ソフトボール連盟野球部門理事や同女子野球委員会委員長など,野球に関わるさまざまな役員を務める。