取材記事

ついに開幕! 日本初の女子プロサッカーリーグで初代チャンピオンを狙う

 国内初の女子プロサッカーリーグ「Yogibo WEリーグ」(以下,WEリーグ)が,9月12日(日)にいよいよ開幕する。WEリーグは,プレーでも,社会への貢献でも,世界一の女子サッカーを目指していくリーグとして設立。2020年10月15日にリーグ参入クラブの発表が行われ,全国から11チームが所属し,ホーム&アウェイ方式による総当たりのリーグ戦を行い,リーグの頂点を争う。


 このWEリーグ参入に向け,サンフレッチェ広島に新設された女子チーム「レジーナ」は,理想のサッカー,そして広島に勇気と希望を与えられる存在になることを目指し,『共感』というチームスローガンを掲げて初のシーズンに挑む。「レジーナ」とは,イタリア語で「女王」を意味し,女王に輝くチームを目指すという意志が込められているそうだ。


 レジーナのホーム開幕戦は,9月18日(土)。マイナビ仙台レディースを広域公園第一球技場に迎える。広島で開催される初の女子プロサッカーの試合である地元開幕戦は,歴史的な試合になることに違いなく,またシーズンの行方も占うであろう重要な一戦を白星で飾ることができるのか。フィールドを駆け抜ける紫の選手たちの姿にぜひ注目いただきたい。


 シーズン開幕に先立ち行われたプレシーズンマッチは,2勝1分1敗と幸先の良い出だし。今回は,初代WEリーグ女王の座を狙うべく準備を進める上野真実選手と,広島出身の齋原みず稀選手の声を届ける。 

勝利を重ねて,広島県の皆さんにレジーナをアピールしたい

【上野真実選手】

―2015年から2020年は愛媛FCレディースでプレーされています。県外から見た広島の印象は?―

 サンフレッチェ広島や広島東洋カープをはじめ,さまざまなスポーツチームがある街。“スポーツ愛”が強いという印象を持っていました。レジーナにとって初めてのシーズンに関われることは光栄なことだと思いますし,責任の重さも感じています。


―広島での暮らしは慣れましたか?―

 2月に初めて広島に来たのですが,それまでずっと田舎で暮らしていたので,広島の道の複雑さに慣れなくて迷いました。練習場まで車を運転して行くのですが,ナビに毎回違う道が出てきたり・・。私には分かりにくくて,覚えるのに苦労しました(苦笑)。


―練習場のある広島経済大学フットボールパークまでのルートは多岐にわたりますからね。ちなみに広島の食事はどうですか?―

 やっぱりお好み焼きがおいしいです。あと,元々牡蠣は苦手なのですが,牡蠣小屋に行く機会があったのでカキフライを食べてみたら,めちゃめちゃおいしくて感動しました。今は自粛期間であまり出かけられず宮島に一度行ったぐらいなので,落ち着いたらほかの場所にも出かけてみたいです。


―では,プレーの話に移ります。日本代表の経験もある上野真実選手ですが,自身が思う強みはどんなところですか?―

 フォワード(FW)としてボールをキープすることが得意です。また,愛媛FCレディースではトップ下,レジーナの練習ではウイングに挑戦し,FW以外のポジションもこなすことができます。ただ個人的には点を獲りたいので,ゴールに一番近いFWのポジションでやりたいですね。瞬時に判断を変えられることも強みだと思います。

―レジーナの雰囲気はどうですか?―

 フクさん(福元美穂選手),キンさん(近賀ゆかり選手)が引っ張ってくれていると感じています。自分よりも年下の層の選手たちも積極的でグイグイ来るタイプなので,距離感がありません。いい環境で過ごせていると思います。


 ※近賀ゆかり・福元美穂…国内トップチーム,海外チームにも所属し,長年なでしこジャパンで活躍。日本が初優勝した2011年W杯,銀メダルを獲得した2012年ロンドン五輪でも主力として,チームに貢献した。


―7月14日,広島県とサンフレッチェ広島が「女性活躍推進に関する協定」を締結しました。今後,女性活躍推進の実現に向けた取り組みを進めていくとのことですが,このようなチームの取り組みについてどう思われますか?―

 近年,“女性活躍推進”というキーワードの拡がりを感じています。自分たち選手が主体となって発信していくことで,女性活躍の幅が広がり,女子サッカーに対する認知度などを高めていきたいです。


―今世界的にSDGsの取り組みが進められています。興味がある項目はありますか?―

 ジェンダー平等についてはよく聞きますし,興味があります。レジーナでの研修でもそういうことを学ぶ機会がありますが,まだ理解できていないところがあると感じています。もっと理解を深めたいですし,多くの方に知ってもらいたいと思います。

―今回,齋原みず稀選手にもインタビューを行います。愛媛FCレディースではチームメイトでしたが,どんな選手ですか?―

 めちゃくちゃ頭が良くて,勉強ができます。でも,サッカーになると頭がかたくなってしまったり,判断に迷うところがあるみたいです。練習では紅白戦での対戦や,同じチームになったら2トップで組むこともあり,シュートセンスや縦への推進力はいいものを持っていると感じています。自分も負けていられないですし,まだ1年ちょっとしか一緒にプレーをしていないので,これからもっと知っていきたいです。


―広島県で初めての女子プロサッカーということで,注目を集めています。どのように応援してもらいたいですか?―

 誕生から間もないチームですし,まだそこまで認知度も高くないと思うので,結果を残すことで応援してくださる方を増やしていきたいです。またこの先,試合を観に来てもらうには,いろんな形で,チームのことを発信していくことも必要だと思います。女子サッカーの魅力は,当たり前のことを当たり前にやるひたむきさやチーム一丸となって戦うところ。継続してプレーしていくことで,女子サッカーの良さを伝えていきたいです。


―最後に,応援してくださる方へのメッセージと意気込みをお願いします―

 多くの皆さんにスタジアムに足を運んでいただき,熱い応援をしてもらえるとうれしいです。期待に応えられるように,しっかり準備していきたいと思います。

プロとして地元に帰ってこられた喜びをプレーに込めて

【齋原みず稀選手】

―広島市出身の齋原みず稀選手は,沼田高校在学中にアンジュヴィオレ広島でプレーされていました。広島大学進学後もサッカーを続け,愛媛FCレディースを経て,レジーナの選手として広島に帰って来られました。オファーがあったときの心境は?―

 アンジュヴィオレ広島には,これまで一緒にプレーしてきた仲間がいるので,試合を観たりして刺激をもらっていました。広島を離れていたのは約1年間と短いのですが,その1年間があったからこそ,広島でサッカーをするという意義に気付けた気がします。広島がどれだけスポーツが盛んであるか,県外に出て分かったことは大きいです。レジーナからまさかオファーをいただけるとは思っていなかったので,知らせがあったときには驚きましたし,うれしかったです。


―1年ぶりの広島での暮らしはどうですか?―

 以前とは生活がガラリと変わり,時間に余裕ができました。でも,その時間をどう使うかは自分の責任なので,難しさも感じています。


―レジーナの練習はどうですか?―

 これまで名門や強豪チームに在籍していたわけではないので,本格的なサッカーの指導を受けたという経験が少ないんです。なので,自分の想像力や周りとのコミュニケーションを大切にプレーしてきました。練習を通して,日本らしい組織的なサッカーを勉強していきたいと思います。

―齋原選手の得意なプレーについて教えてください―

 練習の中で各ポジションの人数を見ながら,サイドや真ん中など,いろいろなポジションをする機会が増えてきました。どんな角度からでもシュートを決めきることが強みだと思っているので,さまざまな位置からシュートを狙っていきたいと思っています。また,ドリブルとかパスとか基本的な技術も高めていきたいです。


―アンジュヴィオレ広島での活躍を続けながら広島大学に進学されていますが,どのように文武両道に取り組んでこられましたか?―

 文武両道は小さい頃から常に意識してきたことです。スポーツか勉強どちらかをするのではなく,サッカーをしていたから勉強がはかどったのだと思っています。勉強だけだと,きっとできていません。両方が気分転換になってバランスを保つことができました。


―7月14日,広島県とサンフレッチェ広島が「女性活躍推進に関する協定」を締結しました。今後,女性活躍推進の実現に向けた取り組みを進めていくとのことですが,これも今世界的に取り組まれているSDGsの一環だと思います。それについて感じておられることはありますか?―

 一番身近だと感じるのは,ジャンダー平等についてです。女子サッカーはいわゆるボーイッシュな人も多く,私たちの中ではいろんな人がいるという多様性の理解ができています。でも,世間一般では理解してもらえないことがまだまだ多いですね。

―レジーナには愛媛FCレディースのチームメイト,上野真実選手も加入されました。今回インタビューを実施しましたが,齋原選手から見てどんな選手ですか?―

 口数は多くないですが,仲良くなればお茶目でイタズラっ子なところがあります(笑)。プレーは自分とは全く違うスタイルなので,勉強になることが多いです。組織的なプレーに力を入れている愛媛FCレディースに長く在籍されていたから,サッカーの基本的な技術がすごく高くて,サッカーのことをよく知っている選手だと思います。


―広島県の皆さんにどんな風にレジーナの魅力を伝えたいですか?―

 さまざまな年齢の選手が集まってのゼロからのスタートですが,分け隔てなくコミュニケーションをとっていて,年齢関係なく言うことは言うし,やることはやる。メリハリがあるチームだと思います。

 また,女子は男子に比べるとパワーやスピードは劣ってしまいます。同じ大きさのフィールドやゴールでプレーすると考えれば,不利に思うかもしれません。しかし,男子のように身体能力を活かしたプレーができないからこそ,コンビネーションを駆使して,チームとしてゴールを狙いに行きます。戦術的にゴール前を崩して得点する面白さを見せていきたいと思います。


―最後に,応援してくださる方へのメッセージと意気込みをお願いします―

 プレシーズンでは試合に絡む時間が少なくて悔しい思いをしました。まずは試合に出場すること。そして,勝利に絡む活躍をしてリーグ初年度の優勝に貢献したいです。応援よろしくお願いします!

【サンフレッチェ広島レジーナ】

 「レジーナ」は,イタリア語で「女王」という意味。「サンフレッチェ」の語源である三本の矢に込められた想いを大切にし,「女王」に輝くチームを目指したいという意志を込めて名付けられた。初代監督は,サンフレッチェ広島トップチームヘッドコーチやアカデミーコーチの経験を持つ中村伸。そしてキャプテンには,2011年に,FIFA女子W杯で女子日本代表「なでしこジャパン」のメンバーとして世界一をつかみ取った近賀ゆかり選手が就任した。日本女子サッカー界の宝が牽引する,新しいチームの躍進に期待が高まる。

【上野真実 Mami Ueno】

 1996年9月27日生,熊本県出身。ポジション:フォワード(FW)。166cm,58kg。環太平洋大学短期大学部を卒業後,2015年に愛媛FCレディースに加入。2016 FIFA U-20女子ワールドカップに出場し,大会得点王に輝く。その後,2017年~2020年にも日本女子代表に選出された。


【齋原みず稀 Mizuki Saihara】

 1997年12月2日生,広島県出身。ポジション:ミッドフィルダー(MF)。171cm,62kg。2013年~2015年アンジュヴィオレ広島に所属。沼田高校卒業後に広島大学へ進学し,女子サッカー部で活躍。2019年はバニーズ京都FCで特別指定選手として登録され,2020年に愛媛FCレディースへ加入した。

本取材にご協力いただきました,サンフレッチェ広島レジーナの関係者の皆様,本当にありがとうございました。

(文・インタビュー 前岡/写真 チーム提供・矢上)