COLUMN / INTERVIEW コラム・取材記事
地方地域の活性化~スポーツ資源を活かすこれからの時代~
皆さん、こんにちは。
「一般社団法人どんぐり財団」の専務理事である関口昌和(せきぐちまさかず)です。
私は東京に生まれ、大学でスポーツを学んだ後、体育教員として教鞭をとってきました。現在は、広島県の北広島町という地域で「どんぐり財団」の一員として、住民の皆様の運動と健康をサポートしています。
今回は、そんな私がどんぐり財団でどんな活動をしているのか、そして今までどんぐり財団としてプロジェクトを形作ってきた経験から、これからの時代におけるポーツと地方地域の活性化についてお話ししたいと思います。
体育教員から、どんぐり財団へ
私がスポーツと関わるきっかけとなったのは、高校時代にソフトボールを始めたことでした。当時通っていた日本体育大学荏原高等学校は、ソフトボールの強豪校として有名であり、もともと身体を動かすのが好きだった私は、ソフトボール部に入部したのです。
高校卒業後は日本体育大学に入学し、体育教員を目指して、スポーツや健康について学びました。卒業後、東京生まれ東京育ちの私が広島県で体育教員になり、慣れない土地での暮らしが不安でしたが、北広島町の方々の温和な空気に惹かれ仕事もプライベートも安定した生活を送っていました。数年後には行政職に転籍。私に転機が訪れます。
それは、文部科学省による総合型地域スポーツクラブの取り組みへの参加が決まったことでした。総合型地域スポーツクラブとは、地域密着型のスポーツクラブを作ることによって、住民の皆さんへスポーツに触れる機会を提供することをテーマに、1995年より文部科学省が実施しているスポーツ振興施策です。
私はこの取り組みに携わったのをきっかけに、現在拠点としている北広島町と、どんぐり財団の活動を通じて、どれだけ住みやすい地域にするかを日々考えています。
地域を支え、育てる、どんぐり財団
まずは私が広島県に関わった経緯をお話ししましたが、次に一般社団法人どんぐり財団についてお話させてください。
一般社団法人どんぐり財団は「地域振興を地域住民と共に考え、育て、支えていく」をミッションに、2012年に設立されました。設立以来、民間でもなく行政でもない、その間を取り持つ中間支援組織として、皆さんと手を取り合って活動してきました。
主な活動内容は、地域の皆さんの健康をサポートする健康増進事業や、スポーツ施設の管理、スポーツ大会やイベントの企画や実施、子供向けのスポーツ教室の実施など、多岐に渡ってプロジェクトを展開しています。
現在は、健康増進と介護予防の対策事業である「元気づくりシステム」に注力しており、北広島町にある全60箇所の施設で、高齢者を対象としたスポーツ・健康コミュニティを作ってきました。
この「元気づくりシステム」は、先進地の三重県いなべ市で成功した事業で、現在は北広島町だけでも700人以上の方々が参加してくださる大きなプロジェクトになっています。
高齢者を対象とした健康事業と聞くと、どうしても体操などのトレーニングだけを想像されてしまいがちですが、私たちが目指しているのは、身体を動かしながら元気になる事は当然ですが、地域の皆さんに楽しんでいただける地域コミュニティ作りも重要視しています。
「元気づくりシステム」でも、各施設内に集まってくださる6〜7人のなかで会話の時間を作ったり、球技やリズムエクササイズを取り入れるなど、参加してくださる皆さんの有意義な時間を作れるよう工夫しています。
また他にも、北広島町のソフトテニスチームと一緒に地域づくりにも携わっています。このソフトテニスチームは、以前は実業団のNTT西日本広島ソフトテニスクラブとして活動していましたが、これからはJリーグのように地域でもリーグを作っていく時代だという考えのもと、一度チームを解体し、私たちの拠点となっている北広島町のどんぐり村で地域に支えられるチーム作りをテーマに再スタートを切りました。
現在は、「どんぐり北広島ソフトテニスクラブ」として、私たちどんぐり財団と一緒に精力的に活動しています。
地域活性化は、まず「コミュニティ作り」から
このように地域の方々と手を取り合って、地域活性化に努めている私たちですが、それでも地方特有の課題を抱えています。それは、「高齢化」と「過疎化」です。なにか事業をやるとしても後継者となる若者がいない、など少子高齢化に伴う悩みは年を追っていくごとに増えていくでしょう。
しかし、高齢化が進んでいくことが確定している現在、ネガティブに捉えるばかりでは前には進めない。そこで、私たちは高齢化に悩むだけで終わらせるのではなく、高齢者の方々にいかに長く元気でいてもらい、地域の活性化にご協力していただくか、そのために私たち世代がなにをすることができるのか、という方向に発想を変えてきました。
そこで始めたのがコミュニティ作りです。
最近では地域コミュニティの希薄化が進んでいますが、北広島町のようなコンパクトな町では、皆で助け合うためにコミュニティが必要不可欠です。
そのため、「元気づくりシステム」のように10人以下のコミュニティを沢山作っていくことで、情報発信ができる場を作ってきました。
最初は小規模なコミュニティでも、沢山作れば各地域のコミュニティを連結させたり、大きなコミュニティに成長させることもできるわけです。
私たちはそのコミュニティの中心に、さらにスポーツと健康を組み込むことで、地域の高齢者の方たちの元気を担っていきたいと思っています。
「この町に住んでいてよかった」を実現するため
2021年、いよいよオリンピック・パラリンピックの年がやってきました。以前に一度延期になりましたが、これまでオリンピックに希望を抱いてきた方もたくさんいるでしょう。
私たちも、オリンピックを期に、どうにか地域を盛り上げたいと考え、数年に渡って準備をしてきました。その1つに、ドミニカ共和国のホストタウンの誘致があります。
もともと広島県自体はメキシコのホストタウンであるものの、この北広島町は町単位でドミニカ共和国のホストタウンになっているのです。これから地域を担っていく子どもたちにレガシーを残したいという思いがあるのです。オリンピックをただのスポーツイベントとして終わらせるのではなく、「この町でなにがあったのか」という未来に続く希望を作りたいと思っております。
そこで、多くの方に掛け合い、私自身も大使館や本国に足を運び、念願のホストタウンになることに成功したのです。一昨年初めて、ドミニカ共和国の選手たちが北広島町に訪れました。
私たちはこのホストタウンを皮切りに、地域の活性化を目指し、これからもスポーツを通じて、北広島町に住んでいる方々に「ここに住んでいてよかった」と思ってもらえるような取り組みを続けていきたいと思っています。
関口昌和
Masakazu Sekiguchi
一般財団法人どんぐり財団専務理事
日本スポーツ協会総合型地域スポーツクラブ全国協議会 副幹事長
広島市立大学・広島経済大学 非常勤講師
東京都出身。日本体育大学を卒業後、体育教員として広島県に着任。その後、北広島町にあるどんぐり財団でスポーツ振興施策に取り組み、現在もどんぐり財団の専務理事として、北広島町で活躍する。