コラム

実感した広島のスポーツの力。課題と目指す姿とは。

スポーツアクティベーションひろしま 代表 神田康範

まさにスポーツにどっぷりの人生です

 広島県庁の組織であるスポーツ推進課内にある1つの部署である、スポーツアクティベーションひろしまの代表を務めている神田康範と申します。また、熊本で活動している「火の国サラマンダーズ」の球団社長をしていて、まさにスポーツにどっぷりの人生です(笑)

私がスポーツを始めたのは小学生の時でした。子供時代は野球をしていましたが、大学の途中までプレーしていました。ただ、メインは野球でしたが、水泳、ラグビーなどいろんなスポーツを競技としてやってきました。

ラグビーについていえば、高校3年生になる時に、故郷の熊本で国体が開催されました。当時ラグビーをしている子供が少なかったため、私が中学校2年生くらいの時でしたが強化チームが編成されました。スポーツテストの上位者から何人かピックアップし、私もメンバーの一人に。ラグビーチームが編成されて約2年プレーしました。これが私の人生にとって貴重なラグビー体験となったのです。

そして、スポーツビジネスの道へ

(火の国サラマンダーズ会見時)

現在はスポーツやスポーツビジネスに携わる仕事をしていますが、実は元々あまり興味がなかったのです。意外に思われるかもしれませんが…。大学を卒業したら大学院に行くか、あるいは旅客機のパイロットになるか、どちらかで悩んでいました。

パイロットになるための試験はある航空会社でギリギリのところまでいったのですが、最終段階で落ちてしまいました。試験が終わった頃には、同世代の就職活動というもの自体が終わりの時期を迎えていましたが、秋採用枠で、知名度や会社としても実力があるブリヂストンスポーツに出会ったのです。そしてブリヂストンに入社、偶然にもスポーツビジネスの世界へ飛び込むことになったのです。

「スポーツアクティベーションひろしま」にかける思い

そこからはアスリートやチームのマネジメントなど数々のスポーツビジネスのジャンルに携わってきました。2019年9月、Bリーグライジングゼファー福岡の代表を退任したタイミングで記者会見をしました。その頃、広島県では、スポーツコミッションを創設するということで、代表を探されていたのです。これは本当に感謝なのですが、私を見つけ当てていただき、今回の連載を主催している「スポーツアクティベーションひろしま(通称:SAH)」の代表に就任したのです。

(じゅんいちダビッドソンアンバサダー就任記者会見時)

広島県の方が、福岡にいた私に会いに来て下さいました。そこで広島県に新たに設置するスポーツコミッションの代表に就任して欲しいという依頼でした。その依頼に私は本当に感激しました。

バスケットのチームが経営危機になった時、社長だった私は、ファンの皆さんからのバッシングを覚悟していましたが、「チームを存続させてほしい」「チームのために頑張ってくれてありがとう」など、温かい言葉をたくさんかけてもらいました。その時にスポーツの持つ力を実感し、必ずスポーツに恩を返さなくてはいけないなという思いが、当時強くあったのです。

行政からの、地方自治体からの依頼という初めてのスポーツへの関わり方でしたが、相手の方の気持ちにも応えたかったので思い切ってトライさせていただきました。そして今、ちょうど1年が経ったところです。

広島と福岡、それぞれのスタンスと方向性

広島で仕事をさせていただいてからの印象ですが、福岡と少し似ているところがあるのです。街全体がギュッとしていてコンパクトシティーで動きやすい。もう一つ似ている点が、プロチームはじめスポーツが盛んなところです。なんといっても広島は、圧倒的に真っ赤、カープで真っ赤という印象です。

もちろんカープだけではなく、サッカーJリーグ・サンフレッチェ広島やバスケットボール・Bリーグの広島ドラゴンフライズなど、日本トップレベルのスポーツチームが数多くあります。こんな街は国内でもなかなかないのではないでしょうか。

当然東京の方がチームの数は多いと思いますが、それ以外の都道府県だと、広島は全国で1番ではないかなと思っています。そして、広島のスポーツ人気はどのチームも凄いです。いつもその熱量に圧倒され、広島のスポーツの力の凄さを実感しています。

スポーツアクティベーションひろしまの活動の意義と意味

(府中市で開催されたEV&ゼロハンカー大会)

SAHでは、「わがまち❤スポーツ」という地域のスポーツに焦点を当てた事業を進めています。県内には、長年地元で親しまれているスポーツイベントがあったり、最新の設備が整ったスポーツ施設があったりと、素晴らしいスポーツ資源がたくさんあります。県内の23市町にあるそれぞれあるスポーツ資源を活かして、地域を盛り上げる取組が「わがまち❤スポーツ」です。課題も多いですが、やり甲斐は日々感じています。

昨年度は、府中市・福山市・北広島町の3つの市と町で活動をしました。今年度は、さらに廿日市市・三次市・呉市を追加した6つの市町で、この事業を進めていく予定です。廿日市市と三次市では、女子野球を、呉市ではトレイルランの大型イベントなどのアウトドアスポーツを活用したまちづくりを進めていきます。県内にあるスポーツ資源を活かして、県民の活力にしていくこと、それがSAHのミッションの一つです。

(広島県立佐伯高等学校女子硬式野球部)

もう一つは、広島県に本拠地を置くスポーツチームの活動支援です。プロチームだけでなく社会人チームなどを含めると、私たちが直接やりとりしているだけでも約25チームあります。たくさんのチームがありますが、横の連携や繋がりができているかというと正直できていないと感じています。

そこで考えたのが、スポーツアクティベーションひろしまがハブとなって、県民が横断的に応援することができる「広島横断型スポーツ応援プロジェクト」です。25チームすべてにご協力をいただいて、ITも駆使しながら、横断型に応援できるシステムを開発している最中なんです。

なぜこのような取り組みをやるのか。広島にはたくさんのスポーツチームがありますが、本当に知名度が高いチームといえば、現状カープとサンフレッチェです。こんなに素晴らしいスポーツチームがたくさんあるのに、県民への認知度はまだまだ十分ではなく、すごくもったいないと思っています。チーム同士が連携することで、お互いの良さをさらに引き出すことができれば、広島のスポーツはもっともっと盛り上がるでしょう。そういったことを我々がお手伝いしたいと考えています。

スポーツアクティベーションひろしまの役割

SAHの目標としては、県内のスポーツ資源を活かした広島県の活性化です。延期となった東京五輪が開催されれば、少なからず全国でスポーツに注目が集まります。このスポーツ熱を一時期だけで冷めさせることなく、継続させていくことが重要なのです。

そして今年度から始める「広島横断型スポーツ応援プロジェクト」では、将来的に、県民が年間を通じていろんなチームの応援に行って楽しんでいる状態を目指しています。

まずは県民の皆さんにチームや選手のこと、そして競技のことをよく知ってもらいたいんです。今はまだ構想段階なので具体的にお話しできないのですが、広島を今以上に活性化させるためにも、この事業を着実に進めて、やり遂げたいと思っています。

私は現在、広島と熊本で仕事をさせてもらっています。先ほども述べましたが、特にプロスポーツがバラバラの活動をしていて横の連携が少ないと感じています。これは広島、熊本だけにかぎった話ではなく、福岡でバスケットに関わっていた時もそう感じていました。熊本でも広島でも横の連携を強化していくことで、スポンサーやメディア枠を取り合うのではなく、県内全体で高めていこうというのを推進していきたいのです。

「スポーツアクティベーションひろしま」

この組織はまだまだ知名度があるわけではありません。でも、少しずつ注目されてきています。今年度は、この組織の勝負の年です。みんなで協力して、しっかりと取り組んで頑張っていきたい。このコラム連載を読んでいただいている方、活動を注目して下さっている方に、引き続きスポーツの話をどんどんと提供して、楽しんでもらうコンテンツを増やしていきたいと考えています。

私たちの活動に応援いただければ本当に嬉しく思います!引き続き宜しくお願い致します!


神田康範

Yasunori Kanda

1981年熊本県生まれ。大阪大学外国語学部卒業後、大手スポーツメーカーに入社し、5年間米国支社に勤務。帰国後、大手スポーツマネジメント会社などを経て「HONDA ESTILO」で本田圭佑のマネジメントを担当。2015年からオーストリアサッカー2部リーグ「SVホルン」CEOに就任。帰国後、2018年~2019年には、Bリーグ・ライジングゼファーフクオカのCEOに就任。現在は九州アジアプロ野球リーグに所属する火の国サラマンダーズの代表取締役としても活躍する。