COLUMN / INTERVIEW コラム・取材記事
赤い火花のごとく。広島から日本の頂点へ
「良き社会人・良き企業人・良きアスリート」
チームスローガンであるこの言葉を彼女たちは常に意識している。それがインタビューからも伝わってきた。
ここは、広島市安佐北区のコカ・コーラレッドスパークスホッケー部の専用スタジアムだ。この日は天気に恵まれ、一面の青い人工芝が良く映える。そのグラウンドには、小麦色の肌が似合う女性たちの姿があった。
実は、彼女たちはコカ・コーラボトラーズジャパン株式会社の正社員だ。正社員として仕事をしながら、どんな思いをもって広島でトップアスリートとして活躍しているのだろうか。
――お二人は県外出身ですが、広島に初めて来たときの印象は?――
金藤選手:私はすごく都会だと思いました!(笑)
出身が滋賀県の田舎の方で、広島駅ついたときに周りに高いビルが多くて、うわーすごい!って思いました!あの時は(笑)
錦織選手:私も島根県から出てきたので同じ感覚ですね(笑)ほんと都会だなって思いました。
――社会人になってホッケーを続ける環境としてレッドスパークスを選んだ理由は?――
錦織選手:高校生の時、レッドスパークスと練習試合をする機会があって、日本代表選手も所属しているので、やっぱりすごく強いチームだと思ったんです。当時、日本リーグの試合もよく見ていたんですけど、レッドスパークスがなかなか優勝できていなかったので、自分がこのチームに入って優勝したいっていう思いが強かったし、どうせやるなら強いチームでやりたい!って思っていたので、レッドスパークスに入団しました。
金藤選手:私も高校生の時にレッドスパークスと練習試合をしたり、日本リーグを見たりして、すごく魅力のあるホッケーをするなと思ったんです。「私もこのチームでプレーしたい!」って思っていた時に声を掛けてもらったこともあって入団しました。
――普段はどこでどんな勤務をされていますか?――
金藤選手:普段は、広島市内(中区東千田町)にあるオフィスでデスクワークをして、練習に行ってました。今はコロナウイルスの影響もあって、テレワークをしています。私がいる部署は在宅でもできる業務が多いので、これからもテレワークが続くんですけど、やっぱり会社の人達と会う機会が減ったので、寂しいですね。
錦織選手:私も今はテレワークなんですけど、週2回は会社に行っていて、ホッケー部に関する業務をしてます。例えば、選手が使っている道具やチームの備品の購入とかしてますね。
――街で声をかけられることはありますか?――
錦織選手:ほんとたまーに声かけてもらいますね(笑)
金藤選手:でもよくテレビに出ている選手とか背の高い選手は、声かけてもらえることが多いですね。
――やっぱり嬉しいですか?――
錦織選手:嬉しいですね!なかなか広島でもレッドスパークスを知っている人が少ないと思うので…(笑)
――アスリートと社会人を両立させるコツは?――
金藤選手:私はテレワークになって通勤時間が無くなって、だいぶ楽になりました(笑)以前はやっぱり仕事がしんどい時もありましたけど、そこは別物なのでしっかり切り替えるようにしてますね。オン・オフの切り替えというか、気持ちの切り替えは常にやってます。
錦織選手:以前、上司から「働く姿を見るとどんなアスリートかわかる」って言ってもらったことがあるんです。仕事をしている姿を見てもらうだけでも、ホッケーをしている姿や自分がどんな選手かわかると思うので、仕事もホッケーも、しっかりやろうと思ってます。
――オフの日は何をして過ごしていますか?――
金藤選手:シーズン中だと、オフが週1、2日ありますね。きっと錦織選手は、オフにする決まったものがあるよね?(笑)
錦織選手:(話題を振られ笑顔を見せる)私はずっと家にいるのが苦手なので、ふらーっとドライブしてますね(笑)好きな音楽をガンガン流して、廿日市の方までよく行ってます(笑)
――オフに県内の他のチームとの交流はありますか?――
金藤選手:今は全然ないですけど、前はハンドボールの試合を観に行ったりしてましたね。
錦織選手:私もハンドボールを観に行ったことあります。前、東京で合宿していた時にメイプルレッズの板野選手と同い年ってわかって、そこから仲良くなりました(笑)あとは、自粛期間中に#10湯田選手が中心となって、ZOOMでオンラインヨガをやった時に、広島のラグビー選手とかも一緒にやりましたね。
――ここからはホッケーについてです。レッドスパークスの特徴は?――
金藤選手:攻撃力のあるチームですね。単に強くて長いボールを打つ単純なパスワークではなく、自分たちで考えてパスしています。攻撃のバリエーションが多く、パスワークが速いので、観ていて楽しいと思えるホッケーができるチームだと思っています。
――そもそもホッケーを始めたきっかけは?――
金藤選手:ありきたりなんですけど、お兄ちゃんがホッケーをやっていて、地元にスポーツ少年団があったので、自然とやってましたね。
錦織選手:私も地元にスポーツ少年団があって、校庭でやってるのを見て面白そうだなと思ったのがきっかけですね。
金藤選手:珍しいスポーツなので、楽しそうに見えましたね。
――ボールも硬いし、怖くなかったですか?――
金藤選手:全然!当時は楽しいしかなかったですね!でもやっぱり怖いですけど、それでホッケーが嫌になったりはしないですね。
――お二人が思うホッケーの魅力は?――
金藤選手:ホッケーってサッカーと似てるじゃないですか?11対11で対戦しますし。似てるスポーツなんですけど、パスワークが速いし、ボールが小さい分、スティックでの細かい技術やドリブル、社会人クラスになると力強いシュートが見れるところじゃないですかね。スピード感や迫力が楽しめるスポーツだと思います。
(グラウンドで練習している選手を指しながら)あの子とかに打たせたら、すごくシュート速いですよ!(笑)
錦織選手:私も同じなんですけど…(笑)ホッケー特有のセットプレーでペナルティコーナーっていうのがあって、なかなか他のスポーツにはない迫力あるプレーなので魅力かなと思います。
――学生の頃から今のポジションですか?――
錦織選手:もともとはフォワードをしていたんですけど、高校の先生のディフェンスやってみたら?っていう一言でディフェンスになりました。
金藤選手:え?そーやったん?(笑)
錦織選手:パッとしないフォワード…(笑)
金藤選手:ディフェンスやってて良かったなぁ(笑)
錦織選手:ほんとディフェンスじゃなかったらこのチームにいないと思います(笑)
――ホッケーを初めて観る人には、どのようなプレーに注目してほしいですか?――
錦織選手:ルールが難しいから初めて観る人は難しく感じると思うんですけど、スピード感が魅力だと思います。
金藤選手:ルールが難しいんですよねー。なんで反則なん?みたいなことが多いと思うんですよ。でもそういうのを無しにしたら、やっぱりシュートじゃないですかね?
錦織選手:シュートは音もすごいし、やっぱり迫力があるかな。
――日本リーグの見どころを教えてください。――
金藤選手:今年は特に1戦1戦が大事で、と言いながら初戦を落としてしまったんですけど、まだ挽回できますし、これから1試合1試合勝利したいです。決勝リーグで、またライバルのソニーHC BRAVIA Ladiesとの対戦もあるので、これからは1試合も負けることなく、パーフェクトな試合ができるようにやっていきたいです。
――今後、レッドスパークスが広島でどんなチームになっていきたいですか?――
金藤選手:今でも日本各地のレベルの高い選手が集まってきているんですけど、やっぱり広島のチームですし、スポーツ少年団の子供たちも頑張って練習しているので、広島出身の選手がたくさん所属してくれると嬉しいですね。
錦織選手:広島はスポーツ王国なので、カープやサンフレッチェにはかなわないとは思うんですけど、それでももっと認知度が上がって、コカ・コーラと言えばホッケー、ホッケーと言えばコカ・コーラと言ってもらえるようなチームになってほしいです。
――今季の個人としての目標をお願いします。――
金藤選手:東京五輪が延期になってしまって、今季はチームに一番フォーカスできるので、キャプテンを任せてもらっている以上、チームのために責任もって戦いたいです。
錦織選手:私のポジションがフルバックというフィールドプレーヤーの中で一番後ろのポジションなので、一番後ろから良い攻撃ができて、守備の時は中心となって周りを動かすっていうのをずっと目標にしてきたんですけど、なかなかできていないので、できるようにしたいです。チームにためにしっかり貢献したいと思います。
――チームとしての目標をお願いします。――
金藤選手:チームが優勝するために、自分たちができることを100%やっていきたいと思います。
――最後にまだホッケーを観たことがない県民に向けてメッセージをお願いします。――
金藤選手:1回とりあえず見に来てください!1回見たら絶対面白いスポーツだなって思ってもらえる自信があるので、ぜひ試合見に来てください!今はスタジアムに観戦に来てもらうのは難しいですけど、ネット配信もあるので、ぜひ見てください!
錦織選手:ほぼ同じになるんですけど…(笑)魅力がたくさんあるスポーツなので、1回見たら絶対ハマると思います!ぜひ1回見てください!
トップアスリートと聞くと、スポーツに専念している選手を思い浮かべることが多いと思うが、彼女たちは働きながら、大好きなホッケーで日本一を目指している。
赤い火花のごとく、縦横無尽にグラウンドを駆け回る彼女たちは、ホッケーをしていない時間があるからこそ、改めてホッケーの楽しさを感じることができ、一企業の一員であるからこそ、支えてくれる周りの方への感謝の気持ちがより強くなるのだろう。
広島から日本の頂点へ。今季の挑戦はまだ始まったばかりだ。
金藤祥子
Shoko Kanefuji
滋賀県出身。滋賀県立伊吹高等学校出身。高校卒業後、コカ・コーラレッドスパークスホッケー部に入団。ミッドフィルダーとして攻守にわたりチームを支え、主将としてチームを精神的にも支えている。
錦織えみ
Emi Nishikori
島根県出身。島根県立横田高等学校出身。高校卒業後,コカ・コーラレッドスパークスホッケー部に入団。ポジションはフルバック。ディフェンスの要としてチームに貢献する。
本取材にご協力いただきました
コカ・コーラレッドスパークスの関係者の皆様、本当にありがとうございました。
(文・インタビュー 矢上/写真 向畑)