取材記事

広島発祥のスポーツ「エスキーテニス」とは。

 県立広島大学エスキーテニス部

広島のスポーツと聞くと、カープやサンフレッチェ、ドラゴンフライズなど、トップスポーツチームを思い浮かべる方が多いのではないだろうか。広島県内にはトップスポーツチームが多くあり、1年中途切れることなく試合が行われている。これがスポーツ王国とも呼ばれる所以だろう。

そんな広島は、あるスポーツ発祥の地でもある。それが「エスキーテニス」だ。ルールはテニスによく似ているが、コートは、テニスコートの8分の1のサイズ。卓球のラケットを少し大きくした木製のラケットを使用する。ボールは直径4cmスポンジボールに羽根がついているのが特徴だ。

エスキーテニスは、1945年、原爆が投下された廃墟の中で、広島の子供たちが焼け残った板切れを持って、手作りのボールを打ち合って遊んだのが始まりといわれている。

この広島発祥のエスキーテニスの魅力を県内に広めていきたいと活動しているのが、県立広島大学エスキーテニス部。今年度は、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、学内での勧誘活動はおろか、サークル活動自体もなかなか実施できない状況だった。

そんな状況下でも、エスキーテニスの魅力を発信したいと語るのが、部長の吉本昂平(よしもと こうへい)さんと副部長の椎葉陸(しいば りく)さん。2人にサークルの特徴やエスキーテニスの魅力について語ってもらった。

(右:吉本さん、左:椎葉さん)

――まずはサークルの特徴を教えてください。――

吉本さん:他のサークルと比べて部員数が少ないので、部員全員と話す機会もありますし、和気あいあいと活動を楽しめると思います。

――現在の所属部員数は何名ですか?――

吉本さん:3年生が引退したので、2年生が8人所属しています。今年は新型コロナウイルス感染症の影響で大学に来ることができない時期も多かったですし、勧誘活動も出来なかったので、新入部員がいないんです。

――入部したらすぐ試合に出られますか?――

吉本さん:試合によっては段級審査というものがあって、段位を取得していないと出場できない大会もありますが、審判の方が打球を見て判断するので、すぐに取得できて試合に出ることができます。なので、初心者でも気軽に始めやすいスポーツだと思います。

椎葉さん:敷居は低いよね。ラケットを買えば始められるから!

――エスキーテニスを始めたきっかけを教えてください。――

吉本さん:同じ学科の友達が先にエスキーテニス部に入部していて、話を聞いたら面白そうだなって思ったので、僕も入部しました。

椎葉さん:学内で新入生に向けた部活紹介があって、その時にエスキーテニス部のチラシを見たんです。最初、エスキーっていうのがサークルの名前だと思っていて、みんなで楽しくテニスをするサークルだと思っていたんですね。そのあと、サークルの説明があった時に「テニスと全然違うスポーツなんだ」とわかって、すごく興味を持ったのが最初ですね。入学したら何かスポーツをしようとは思っていたし、中学・高校の時にテニスをしていた時期もあったので、なんかできそうだなと思って、練習している体育館へ見学に向かったんですよ。

――やっぱりテニス経験者が多いですか?――

椎葉さん:きっかけとしては一番多いのかな?でもだからといって、テニスや卓球の経験者が必ずしも技術が高いわけではないし、プレースタイルに影響しないですね。

――エスキーテニスの魅力を教えてください。――

吉本さん:コートが小さい分、他の競技より運動量が少ないんですよ。だから技術を磨けばフィジカル面をカバーできて、試合に勝つこともできるので、他の競技よりも勝てる要因が多いから楽しめるんじゃないかな。

椎葉さん:社会人の方も参加する大会で、高齢の方と試合したんですけど、巧みなプレーで翻弄されましたね。同じネットスポーツの卓球やテニスは打球が速いので、サーブが返せないということもあるんですけど、エスキーテニスはそこまで打球が速くないので、そういうこともあまりないし、テニスほど動かないので、初めての方でも始めやすいと思います。

吉本さん:コートはテニスコートの8分の1しかないんですよ。

――小さなコート内でプレーする時のコミュニケーション重要ですよね。――

吉本さん:レシーブの時なんですけど、相手が打ってきたボールをどっちの方向に返すかっていうのは、あらかじめサインでお互い把握するようにしています。

――ダブルスのペアはどうやって決めていますか?――

椎葉さん:エスキーテニスも普通のテニスと同じで、前衛後衛があるので、そこは考慮します。エスキーテニスは左利きが後衛で有利と言われているので、左利きの人は後衛になることが多いんです。プレースタイルが合う人で組むことも多いんですけど、テキトーに決めてることも多いですね(笑)みんな仲がいいので、誰と組んでも楽しくプレーできるので!

――そもそもルールは難しいですか?――

吉本さん:基本的にテニスとゲームの進め方は変わらないです。

椎葉さん:どちらかというと点数の入り方は卓球に近いかもしれないですね。

吉本さん:覚えることはそこまで多くないので、やっていればすぐに覚えられると思います。

椎葉さん:その点は初心者の方でも始めやすいポイントだと思います。

――今後、エスキーテニスをどんな方に体験してほしいですか?――

椎葉さん:僕自身の経験から言えることかもしれないんですけど、大学に入学してから、本格的に運動部に入ってスポーツを続けたいって思っていない人や、あんまり運動したことがないけど、大学に入学したから始めたいって思っている人ですかね。僕たちは男女混合で練習しているので、男女関係なくぜひ始めてほしいです!

(牛田にあるエスキーテニスコートでの練習)

吉本さん:エスキーテニス部は県内の他の大学との繋がりがあって、よく合同で練習するんです。なので、他大学の学生とも仲良くなるチャンスがあるんですよ。試合の時は社会人の方と対戦することもあるので、たくさんの方の話を聞く機会もありますし、交友関係を広げることができるっていうメリットもあります。

椎葉さん:僕は、社会人サークルでエスキーテニスをやっている人がいることが当時衝撃でしたね。例えば社会人野球とかだと、経験者が集まって本格的に競技に取り組んでいると思うんですけど、エスキーテニスは、趣味の一環でやっているのに、技術がものすごく高い人がいるのが不思議でしたね。

――エスキーテニスは広島発祥のスポーツですが、これからよりメジャーなスポーツにするにはどうしたらいいと思いますか?――

椎葉さん:ずっと考えているんですけど、難しい問題なんですよね…。

吉本さん:エスキーテニスの指導者の方が、毎年定期的に小中高生を対象とした教室を開いているんですけど、そこで知ってもらうのが一番なのかなと。

椎葉さん:牛田にはエスキーテニス用のコートがあって、そこでは小さい子もよくプレーしているんですよ。でも他の場所ではなかなか見られない光景なので、牛田地域で止まってしまっているのかな…。

(エスキーテニス用の木製ラケット)

――公式戦で団体戦はありますか?――

吉本さん:基本的にエスキーテニスはダブルスでの試合がほとんどです。うちは人数が少ないから、全員で団体戦を戦います。イメージはテニスとほとんど変わらないですよ。

――今後、広島でエスキーテニスがどんなスポーツになってほしいですか?――

椎葉さん:小学校のクラブ活動で実施するようなスポーツになってほしいですね。エスキーテニスは、小学生でも気軽に取り組めるスポーツだと思っているので、小学校から触れる機会があると嬉しいですね。そうなっていくと知名度も上がっていくと思うんですよ。

吉本さん:牛田にエスキーテニスのコートがあるということは、すごく恵まれた環境だと思うんです。サークル活動ほど本格的じゃなくていいので、友達と気軽にやってみてほしいですね。イメージはバドミントンや卓球なんですけど、公園やスポーツセンターでいろんな人が気軽にできるスポーツになってほしいです。

――最後に県立広島大学エスキーテニス部新入部員募集に向けてメッセージをお願いします。――

椎葉さん:道具も少なく、本格的なユニフォームも必要ない、授業の合間にできる気軽なスポーツです。大学で勉強だけだと大変だと思うので、まずは気分転換くらいの気持ちで始めてほしいですね。

吉本さん:僕が思うエスキーテニスの良いところって、プレーを通じて周りとしっかりコミュニケーションが取れるところなんですね。新しいコミュニティを作る機会になると思うので、ぜひサークルに入ってほしいです。

椎葉さん:今年は新型コロナウイルス感染症の影響もあって、学校にも来られなかったし、もちろんサークル活動も停止していました。オンラインでの授業も増えたので、本当に人との接点がなくなったんです。特に1年生は大変だったと思うんですよね。でも僕は、久しぶりのサークル活動でみんなの顔を見たら安心しましたし、エスキーテニス部に入っていたから、みんなと繋がっているんだなって実感しました。本当に居心地がいいんですよね。

吉本さん:ちらっと練習を見に来てもらえるだけでもいいのでぜひぜひ!

椎葉さん:興味ある!?ってちょっと勢い余って声かけちゃうかもしれないけど(笑)ちょっと気分転換くらいに来てもらえたら嬉しいので、ぜひ来てください!このサークルは、県立広島大学広島キャンパスの学生が対象のサークルのため、他大学の学生は入部できないんですけど、他大学のエスキーテニス部と合同で練習することもあるし、他大学の学生であっても一緒に練習はできます!なので、エスキーテニスに少しでも興味をもってくれて、やってみたい方はSNSからぜひメッセージをお願いします!

「エスキーテニスを一言でいうとどんなスポーツか」と質問すると、「テニスと卓球とバドミントンを足して3で割ったようなスポーツ」と言われる。この返答を聞いただけでも、どんなスポーツか不思議に思ったのは私だけだろうか。

スポーツ王国広島が発祥のエスキーテニス。その聖地とも言われている広島市東区の新牛田公園には、常設のエスキーテニス専用コートが10面あり、用具の貸出も含めて無料で利用できる。身軽に動ける服装と運動靴があれば、誰でも気軽に楽しむことができるので、ぜひ一度体験してみてほしい。

本取材にご協力いただきました

県立広島大学エスキーテニス部の関係者の皆様、本当にありがとうございました。

(文・インタビュー・写真 矢上)