COLUMN / INTERVIEW コラム・取材記事
5年前のリベンジを! “さくら満開”に燃える6人のホッケー女子日本代表
東京五輪に出場するホッケー女子日本代表「さくらジャパン」のメンバーに、広島からコカ・コーラレッドスパークスから最多の6選手が選出された。
さくらジャパンの五輪出場はアテネ五輪から続けて5度目。前回のリオ五輪では一勝もできなかった悔しさから、今回はリベンジを強く誓う。所属チームの期待、広島の期待、そして日の丸を背負って戦う6人に、開幕直前の意気込みを聞いた。
◆仲間の思いを胸に前回の雪辱を果たす
【錦織えみ選手】
―錦織選手はリオ五輪に続き、二度目の出場となります―
選ばれたときは素直にうれしかったですが、ホッとした気持ちのほうが大きかったです。これまで国内でたくさん合宿をしてきて、良い選手が数多くいました。その中で自分のプレーをしっかり見て評価をしていただけたことに感謝しています。
―リオ五輪ではさくらジャパンの中で初得点を決められましたが、勝利には結びつきませんでした―
全試合に出場してチームのために戦いましたが一勝もできず、自分の力不足を実感しました。今回は日本開催ですし、ホッケーを日本の方に知ってもらえる良い機会になると思っています。そのためには結果も残さないといけないので、前回の悔しい気持ちをバネにリベンジしたいと思います。
―錦織選手はDFですが、代表ではどのようなポジションが見込まれるのでしょうか?―
自分のチームでは一番後ろのラインに立っていますが、代表ではサイドバックなど異なるポジションをやることが多いです。サイドバックは自分の持ち味である粘り強い守備を活かせると思いますし、普段はできない攻撃参加のチャンスも多く巡ってきます。しっかりと自分のプレーを考え、相手がどう仕掛けてくるかも分析してやっていきたいと思います。
―6月には聖火ランナーを務められましたね―
聖火ランナーに選んでいただけてすごく光栄でした。一生に一度もできないような、貴重な経験だと思います。トーチを持った瞬間や、トーチキスで火をつなげることができたときには、責任や重みを感じました。新型コロナウイルスの影響で、無観客での開催となり地域のみなさんに見ていただけない寂しさはありましたが、平和の象徴である平和記念公園で聖火をつなげられたことは、素晴らしい経験となりました。
―プライベートなことも質問させてください。家電がお好きだと聞いたのですが、本当ですか?―
本当です(笑)。休みの日やちょっとした空き時間に、ふら~っと電気屋さんに行きます。家電は一つひとつ色んな機能がついているので面白いです。3年前にテレビを55インチのものにして、最近は洗濯機とドライヤーを買い換えました。
―どういう形でチームに貢献していきたいですか?また意気込みを教えてください―
まずは、今回も選出していただけたことに感謝しています。そして、今までたくさんの仲間と練習をしてきましたが、選出されなかったメンバーの思いも忘れることなく頑張りたいです。たくさんの方からの応援を力に変えて、日本代表として恥じないようにプレーしたいと思います。それと、五輪初出場のメンバーに、前回大会の様子などを教える役割もあると思っています。五輪はスポーツの祭典という特別な舞台なので、周りの雰囲気にのまれないことも大切です。全員が力を出し切れるように良い影響を与え、結果を残せるように頑張ります!
◆プレーを通して世界に明るいメッセージを
【山田明季選手】
―山田選手はFWという今回特に競争が激しいポジションから選出されました―
100%の力を発揮できれば大丈夫だとは思いつつも、良い選手が多かったので選ばれるか緊張していました。選出していただけて本当にうれしいです。家族もすごく喜んでくれました。
―英会話が得意だそうですね―
大学卒業後に約2年ほどオーストラリアとイギリスに留学していたので、そこで話せるようになりました。今でもオンラインで英会話のレッスンを受けたり、勉強自体は続けています。コカ・コーラレッドスパークスのアール・バー監督も代表チームのアルナウ・クレウス シャビエル監督も外国人なので、日常的に英語を使う機会が多く、役立っています。
―高校時代は勉強との両立が大変だったとお聞きしました。スポーツをする子ども達に、両立するためのアドバイスをいただけますか?―
高校の頃は、7時間目や夏期講習があるときは、練習する時間が取れず大変でした。でも今思えば、勉強はすごく大切なことなので、頑張ってきて良かったと思います。
高校生までの子どもたちに伝えたいことは、まず第一に勉強をしておいた方が良いということ。勉強をきちんとした中で、自分で時間をマネージング管理することが大事だと思います。
―代表としての意気込みを聞かせてください―
開催するべきなのか様々な意見がある中で、私たちがスポーツを通して何を伝えられるかが、いつも以上に期待されていると思います。勝つということ、そしてプラスアルファで、スポーツの力で世界を明るくできるようなメッセージを伝えていきたいと思います。
◆声出しやプレーでさらに士気を高めたい
【浅井悠由選手】
―リオ五輪ではバックアップメンバーを経験し、今回は代表に選出されましたー
自分自身のプレーを確実にこなせば選ばれると思っていました。メダル獲得に向けて自分の仕事をすることが一番なので、選出されたことはあくまで通過点です。勝利のために何をするべきかを考えています。
自分はDFで副キャプテンでもあるので、チームをまとめたりキャプテンを支えていきたいです。さらに、自分自身のプレーでチームを勢い付けて、メダル獲得に貢献できるようなプレーを一つでも多くしたいと思っています。
―コカ・コーラレッドスパークスではムードメーカー役とお聞きしました。代表でも同じようにチームを盛り上げていきますか?―
ムードメーカーだという自覚は特にないんです(笑)。大舞台なので私自身も緊張しそうですが、みんなに声をかけて盛り上げていきたいと思っています。
―豚の角煮が上手とお聞きしました。料理が得意なんですね―
上手かは分からないですが(笑)、おいしいとよく言ってもらえます。料理は好きなのですが、最近は練習が忙しくて中々つくれていません。買った食材を余らせてしまったら勿体ないので、簡単につくれるものばかり選んでいます。
―体のために食事で気を付けている点はありますか?―
好き嫌いをせず、動いた分だけしっかり栄養を取るようにしています。昔から両親には「世の中には食べられない子がいるんだから、残さず食べなさい」と言われて育ちました。
好き嫌いをしないことで身長も172cmまで伸びましたし、大きなケガをすることなく成長できたと思います。大人になっても食事は大事ですが、成長期は特に大切だと思います。
―代表としての意気込みを聞かせてくださいー
五輪開幕が迫る中で、自分がやるべきことが明確になってきました。チームとしても何をしないといけないか、一人ひとり理解していると思います。メダル獲得に向けて最大限の準備をして、頑張りたいと思います。
【松本夏波選手】
―代表に選出されたときの率直な想いをお聞かせくださいー
初めての五輪なので、うれしい・楽しみという気持ちと、緊張の両方があります。発表を待つ間は、自分の力は出し切ったし、あとは選考を待つだけ!という達成感がありました。これまでの選考会で何度も落ちてきたので、ここまで支えてくださった方に感謝しています。
―ポジションはDFですが、戦い方のイメージはありますか?―
基本はDFですが、これまでMFとしての国際経験もあるので、監督からMFもやるかもしれないと言われています。もしDFでプレーすることになっても、MF経験者としての攻撃的な面を後ろから出していきたいと思っています。
―コカ・コーラレッドスパークスの2020年チームポスターをデザインされたそうですね―
昨年7月に広報担当へ異動したので、YouTubeを見たりしながら手探りで勉強してつくりました。これまでデザインなどに関心はなかったのですが、写真を組み合わせたりして考えながらつくるのは面白いなと思いました。今後、試合ごとに動画をつくるなど、やってみたいことが増えました。
―代表としての意気込みを聞かせてくださいー
目標はもちろん金メダルを獲ることなので、そのために全力を尽くすことだと思います。そして、これまで応援し、サポートしてくださった方々にプレーで頑張っている姿をお見せしたいと思っています。また、子どもたちが、憧れたり、やってみたいなと思ってもらえるプレーをしたいです。
◆走り負けないタフな戦いで勝利を
【森花音選手】
―6歳からホッケーを始められたそうですが、代表に初選出されていかがですか?ー
小学生の頃からホッケーの一番大きい試合が五輪ということを知っていてホッケーを続けるならトップの世界でやりたいと思っていました。ずっと目標にしてきて、しかも自国開催の大会に出られるとは思っていなかったので、うれしい気持ちでいっぱいです。
―選出される自信はありましたか?―
一年前は全く自信がなかったのですが、この一年間で自分なりに自信を持てるよう練習を続けてきました。代表選考の最後くらいにケガをしてしまい思うようなプレーができなかったので、代表に入れるかはギリギリなところだと思っていました。
―お母さまやお兄さまもホッケーをされていたそうですね―
ホッケーあっての家族というか、本当にホッケー一家なので(笑)、喜びようがすごかったです。お母さんはいつも厳しいコメントをくれる存在で、試合終わりに、必ず長文のLINEが届きます(笑)。兄は指導者として、今は小学生に教えたりしています。五輪はお母さん自身の夢でもあったので喜びと同時に、FWなのでいっぱい点を決めるように喝を入れられました。
―家族の期待を一身に背負うのも大変ですね(笑)。得点を決めるイメージはできていますか?―
外国人選手相手にきれいなシュートが簡単に決まることはまずないと思うので、ガムシャラに泥臭く、ゴールに執着したいと思っています。
また、外国人選手は身長が高く腕も長いので、1対1で抜けたと思っても後ろからまだ追いかけられていることがあります。日本人との大きさの違いを十分に理解し、しっかりと戦えるように心の準備をしていきたいと思います。
―プレーを通して伝えたいことや、意気込みを聞かせてください―
私はただただホッケーが好きという気持ちで、ここまでやってくることができました。苦しいとか上手くいかないというときもあるけど、やっぱり、好きという思いが夢を叶えるためには大切なことだと思います。特に子どもたちには好きなことを全力でやり抜いてほしいです。そして、今回は自国開催なので、日本中のみなさんにホッケーを知ってもらえるように結果を出すということが一番だと思います。日本人選手は走力と体力があるので、後半になっても走り疲れることなく、勝負どころで力を発揮できるはずです。しっかり得点を決めて勝てるように頑張ります!
◆前への推進力と粘り強さが武器
【尾本桜子選手】
―代表に初選出された気持ちと、チームの雰囲気を教えてください―
素直に嬉しいです。選出される自信は全くなく、可能性は五分五分といった感じで、分からなかったのでドキドキしていました。今、五輪に出させていただくという責任を、合宿が進んでいく中で強く実感しています。今回は延期もあったので、いつも以上にチームみんなの気持ちが強く、士気がみなぎっています。
―山口県岩国市玖珂町のご出身ですね。地元からの期待も感じておられると思います―
拠点としている場所と地元が近いので、応援の声をたくさんいただいています。選出されたとき、一番最初に家族に報告したのですが、父は泣いていました(笑)。お母さんは「しっかり頑張んなきゃね!」と声をかけてくれました。
―妹さんもホッケーをされているそうですね―
妹は今、大学でプレーをしています。子どもの頃、妹が友達からホッケーに誘われたのをきっかけに、私も一緒に始めました。3歳~中学3年生までは父の影響で空手もしていて、そのおかげで、柔軟さや心の強さなど、ホッケーに必要な体づくりができた気がしています。
―代表としての意気込みを聞かせてください―
五輪のピッチに立てることを、とても嬉しく思っています。
ドリブルで前にボールを運ぶこと、ボールへの執着心が自分の強みだと思うので、自分のプレーを100%発揮したいです。チームの勝ちに貢献できるよう準備していきたいと思います。
コカ・コーラレッドスパークスホッケー部
広島市安佐北区を拠点に活動し,ホッケー日本リーグに所属。「良き社会人・良き企業人・良きアスリート」をモットーとし,日々業務と競技の両立に努めている。ホッケーはシーズンに4つのリーグと大会が開催され,常に上位に君臨し,数多くの優勝を経験。2020年はコロナ禍で国民体育大会が延期になるも,高円宮牌ホッケー日本リーグ,全日本社会人ホッケー選手権大会,全日本女子ホッケー選手権大会で悲願の三冠を達成。今年は「覚悟」をチームスローガンに掲げ,チームの長所である「個の力」と「パスワーク」を発揮している。
本取材にご協力いただきましたさくらジャパン、
コカ・コーラレッドスパークスホッケー部の関係者の皆様、本当にありがとうございました。
(文・インタビュー前岡/写真コカ・コーラレッドスパークスホッケー部提供)