COLUMN / INTERVIEW コラム・取材記事
20年ぶりに春のセンバツ大会同時出場の広島商業と広陵。両校注目選手の想いに迫る
2022年3月18日から甲子園球場で開幕する高校野球・春のセンバツ甲子園(選抜高等学校野球大会)。広島県からは、2021年秋に行われた中国大会を制した広陵高校(3年ぶり25回目)と、2021年秋の広島県大会を制し、中国大会で準優勝した広島商業高校(20年ぶり22回目)の2校が出場する。
広島県高校野球界のみならず、伝統校として全国的にも有名な両校が揃ってセンバツに出場するのは2002年以来、20年ぶり5回目となる快挙だ。
3月4日に組み合わせ抽選会が行われ、広陵高は大会2日目の第一試合で福井県代表の強豪・敦賀気比高校と、広島商業は大会5日目に福井県代表で21世紀枠での出場となる丹生高校と対戦となり、いずれも福井県代表を相手に初戦を迎える。
今回は、20年ぶりの春のセンバツ出場となる古豪・広島商業からは攻守の要である主将の植松幹太選手に、春のセンバツで全国制覇3度を誇る広陵高校からは、昨夏に1年生ながら打線の主軸を任され、新チームになってからは4番を担う真鍋慧選手に、それぞれのセンバツにかける想いを中心に話を聞かせてもらった。
4番打者として、しっかりランナーを返す打撃を展開したい
広陵高校硬式野球部・真鍋慧(1年)
ー真鍋選手にとって初めての甲子園となります。センバツ出場が決まった時の率直な感想を教えてください。
素直に嬉しかったですし、やっとスタートラインに立ったという気持ちでいっぱいでした。
ー初戦の対戦相手である敦賀気比高校についてはどのような印象ですか?
神宮大会にも出られていて、バッターもピッチャーも良い選手が多く、総合力の高いチームだと個人的には思っています。
ー真鍋選手自身は、昨年夏1年生の時からレギュラーとして試合に出ていました。秋の新チームになってからの印象はいかがですか?
昨年のチームよりも守備の面であったり、どのバッターでも打てると思っているので、粘り強さがあるチームだと思います。
ー新チームになり、秋の広島県大会では3位でしたが、中国大会で優勝し、神宮大会では準優勝という結果を残されています。秋から本格的に主力として試合・練習に臨む中でどのような成長を感じますか?
秋の広島県大会では自分たちの思うような野球ができなくて悩みながらやっていました。ですが、中国大会では試合を重ねるごとにチームの成長を感じられるチームだと思いました。
ー中国大会を制し、明治神宮大会では全国の強豪校と対戦しました。その経験をどう捉えていますか?
良いピッチャーとたくさん対戦できたので、自分のバッティングの技術の向上に生かしていきたいと思います。
ー秋の大会後もコロナ禍でいろいろな制限があったと思います。どのようなことを意識して練習してきましたか?
自分は体が細身なんで、ウェイトトレーニングだったり食べる量を増やしたりして、体重を増やすようにしました。あとバッティング技術の面では、逆方向に打つことをチームで徹底しているので、逆方向に強い当たりを打つことを意識して練習しました。
ー改めてお聞きしたいのですが、広陵高校で野球をやりたいと思った理由を教えてください。
兄が広島商業で野球をやっていたので(駿(たけと)さん・2019年夏に広島商業の主将として甲子園に出場)、その兄を超えたくて広陵高校に入学しました。
ー真鍋選手が高校入学当時(2021年)はすでにコロナ禍という状況でした。やりづらさなどは感じていますか?
練習時間も限られていますが、逆に短い時間の中で効率の良い練習をやっているので、良い練習ができていると思います。
ー1年生から試合に出場し、新チームが始動してからは4番も任されていますが、プレッシャーはありましたか?
そうですね。1年生の頃から中軸として出場していて、自分のせいで負けた試合があったので、そういう時には責任を感じていました。
自分の前に内海(優太・2年)さんという自分より良いバッターがいて、後ろにも田上(夏衣・1年)という良いバッターがいるんで、自分が打てなくても田上が返してくれるという気持ちでやっています。
ー真鍋選手は高校通算10本塁打を記録しており、長打力が注目されています。やはりホームランを打ちたいという意識は強いですか?
そんなことはないですけど、チームが勝つことが優先で自分の結果は後なので、あくまでもチームの勝利を優先しています。
―ここで、真鍋選手の素顔についてお聞きさせていただきます。憧れの野球選手は誰ですか?
広陵高校の先輩でもある、横浜DeNAベイスターズの佐野恵太さんです。長打力もあってホームランをたくさん打っておられますし、打率3割以上の成績を毎年残されているので、そういう部分に憧れています。
そして、中井(哲之)先生(広陵高校野球部監督)のどっしり構えた男らしいところを尊敬しています。
ー最後に、センバツに向けて意気込みを教えてください。
チームとしての目標は日本一です。個人的な目標は、4番を任せていただいているので、持ち味の長打力を発揮して、ランナーが出たらしっかり返せるようなバッティングをしたいです。
機動力野球が持ち味の広商を支えるショートで主将の植松選手
広島商業高校硬式野球部・植松幹太(2年)
ー植松選手にとっては初めての出場となるセンバツ開幕に向けて、率直にどんな心境でしょうか?
正直ほっとした気持ちがありましたが、それだと油断になってしまうので、そこで満足せず自分たちの課題や隙をなくすよう練習しなければと、より一層気が引き締まりました。甲子園では自分たちの思い通りのプレーができるように準備をしていこうという気持ちです。
―対戦相手が丹生(にゅう)高校に決まりました。
丹生高校は投手力だけではなく、攻撃にも力を入れているチームだと聞いているので、自分たちの守りから攻撃につなげるという野球を念頭に置きながら戦いたいと思っています。
―昨年秋以降、新チームの仕上がりをどう感じていますか?
昨年のチームと比べて、粘り強さが自分たちの持ち味だと思うので、練習の中でも粘り強くというのを意識してやっています。
―新チームが始動して以降は、秋の県大会で優勝して中国大会で準優勝といういい成績を残しました。この結果はどのように受け止めていますか?
中国大会では悔しい思いをしたので、決勝でしたようなミスを甲子園ではやらないように練習で準備しています。
―コロナの影響などもあると思いますが、この冬の練習はどうでしたか?
時間が制限される中でどれだけ効率のよい練習ができるかということを選手一人ひとりが考えながら、間の時間を短くしようと伝えています。そのおかげで選手も考えながら動いてくれていますし、とにかく時間を無駄にしない、ということを意識して練習を行ってきました。
―新チームの主将になったときの気持ちはいかがでしたか?
決まったときは急に告げられてびっくりしたし不安もあったんですけど、とにかくやってやろうというチャレンジ精神が湧き上がりました。まだまだ課題はあって、成長したとはっきり言える部分はないんですけど、視野が広くなったなとは思います。
―自身の強みは何だと思いますか?
どんなときでも冷静に考えられるのは強みだと思うんで、甲子園でもその冷静さを忘れずに、自分のプレーというよりもチームに貢献できるプレー、まわりの選手を助けられるようなプレーをしていきたいと思います。
―今回のセンバツでは広島県代表として広陵高校と同時出場となります。それについてはどのように思っていますか?
広島県の代表としてこの二校が出場するのはすごく嬉しいです。僕らとしては中国大会で広陵高校さんに負けてるので、次は勝てるようにという意識は強くあります。
―やはり広陵高校はライバル校として特別な存在ですか?
そうですね。県内では広陵高校さんを意識する部分もあります。でも、相手というよりかは、自分たち優先で自分たちの野球ができるように日頃考えて、今は甲子園のことだけ考えています。
―ここで、植松選手のパーソナルな部分を聞かせていただきます。広島商業で野球をやりたいと思った理由は?
野球以外にも、所作や礼儀という人間性を高められるというのが一つの理由ですが、広島県代表の広島商業の一員として全国制覇したいという気持ちがあったので選びました。
―憧れの野球選手はいますか?
巨人の坂本勇人選手です。自分の苦手なインコースも的確に捌いているバッティングが一番憧れている部分ですし、打率を残せるショートの選手というところに惹かれています。
―好きな言葉や座右の銘はありますか?
「切磋琢磨」です。小学校のとき野球部の監督さんからもらった言葉です。常にそれは変わらず、自分だけじゃなくて、周りの選手も向上していきながらチーム全体が向上すればいいチームになると思っています。ライバル意識というのも持ちながら、切磋琢磨するのが自分は好きです。
―最後に、改めて3月18日に開幕するセンバツへの意気込みを教えてください。
自分たちの持ち味である粘り強さを甲子園でも発揮できるように、とにかく終盤まで諦めずに粘り強さを出していきたいと思います。
真鍋 慧
Keita Manabe
身長/体重 189cm89kg
投打 右投げ左打ち
広陵高では1年生の夏からベンチ入りし、打線の中軸として試合出場を果たし、夏の県予選では本塁打も放った。秋の新チームから4番を任され、神宮大会では3試合で8安打、打率.533を記録。この全国の舞台でも本塁打を放つなど、大会屈指の強打者として注目されている。
●広陵高等学校硬式野球部
創部1911年。約100名の部員数をかかえる広島県高校野球界の名門。甲子園出場回数は春のセンバツ24回、夏の選手権23回といずれも県内トップの戦績を誇る。昨年、中国大会で優勝し、神宮大会では準優勝ということもあり、同校は、この春のセンバツでも優勝候補の一角として期待されている。
植松 幹太
Kanta Uematsu
身長/体重 169㎝/68kg
投打 右投げ右打ち
小柄ながら、野球センス抜群の遊撃手。基本に忠実で安定感ある守備力と、つなぎの打撃で中軸も担い、攻守において広島商業の要であり中心的な選手。昨年の夏も遊撃手としてレギュラーで試合に出場しており、新チームからは主将を任されている。
●広島県立広島商業高等学校
創部1899年。123年の歴史を持つ強豪校。甲子園には春のセンバツで21回、夏の選手権で22回出場を誇る。機動力を武器とする伝統の広商野球を展開し、広島の高校野球界を常に牽引してきた。古豪復活を印象づける戦いを期待したい。
本取材にご協力いただきました、広陵高等学校硬式野球部の関係者の皆様、広島県立広島商業高等学校の関係者の皆様、本当にありがとうございました。