COLUMN / INTERVIEW コラム・取材記事
駅伝の街が生んだランナー。入賞に向けてニューイヤーを駆ける
体作りには食が大切。子どもたちに走る楽しさを伝えたい
―日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士の上原寛恵さんに食事面でのサポートをしてもらっているそうですが、指導してもらうようになったきっかけは?
結婚を機に、上原さんにお願いすることにしました。これまでは寮で栄養士さんが作ってくれる食事を食べていたので良かったのですが、結婚したら自分たちで準備しないといけません。僕は元々貧血持ちなのでどうしようかなと思っていたんです。うちの奥さんは中国電力の卓球部出身なのですが、卓球部は上原さんがついて栄養指導をしてもらっていたので、そのご縁でお願いすることにしました。
―指導してもらったことで、食の重要性や体の変化を感じておられますか?
主には、毎日の食事をスマホで撮って上原さんに送り、こういう栄養素が足りていないなどのアドバイスをもらっています。試合前の食事についてや、脱水気味で体の動きが悪いなどの相談、血液検査の結果を診ていただいてのアドバイスなど、本当に助かっています。寮にいるときと変わらず貧血の数値が安定しているのは上原さんのおかげです。実は、僕は子どもの頃から食が細くて、小学校で貧血になってからずっと貧血と付き合ってきました。夏バテで食べられなくなったり、親も苦労していたと思います。陸上は使うのが体一つで、技術で補える部分が少ないので、食事はすごく大事だと感じますね。2022年で30歳になり、どうしても体の衰えが出てくるので、長く陸上を続けられるようにより一層気を付けたいと思います。
―東広島市でダイソー女子駅伝部も活動をスタートし、結果を残しています。
元世羅高校監督の岩本真弥さんが監督ですし、コーチ陣も知り合いばかりなので、すごく深いつながりを感じています。中国電力は、中国地方5県の小中高生を対象にランナーズスクールで指導をしているのですが、こういった取組を一緒にするなど、連携ができるといいですね。女性特有の悩みなど、僕らが対応できないこともあると思うので。
―子どもたちへ指導する際に意識していることはありますか?
小学生に対しては、楽しんでもらうことが一番だと思って指導しています。陸上をするしない関係なく、どの競技でも走るということは基本の動作になるので、楽しんでもらいたいです。そこで将来、長距離をやるようになってくれたらうれしいですね。中学生以上になると、本気で取り組んでいる子の参加が増えてくるので、技術的なアドバイスをするようにしています。フォームに対する質問や、食事で気を付けている点などを聞かれることも多いですね。子どもたちとの触れ合いは刺激になるし、強くなるためにはどうすればいいですか、という質問をもらうのはうれしいです。
強いメンタルを持ち、ニューイヤーを走り抜く
―今は、年明けに開催されるニューイヤー駅伝を控えています。
僕は中国電力に入って7年目なのですが、過去6回とも入賞できていないので、とにかく入賞が目標です。今回は、新型コロナウイルスの影響でケニア人選手が来れるか分からない、来てもどのぐらい走れるかわからないという状況ではありますが、全力を尽くします。個人としての目標は、僕はメインがマラソンなので、コツコツ練習に取り組んで日の丸を背負えるところまで行きたいと思っています。
―ニューイヤー駅伝では過去にも3区を走っており、コースを熟知していてアドバンテージが高いのでは?
3区はこれまで3回走っているので、確かにコースを理解しています。ただ、3区や4区は走る相手が強い。エース区間または準エース区間なので、コースを知っているぐらいのアドバンテージでは無いに等しいと感じています。
―最後に、陸上競技を続ける中でポリシーとして持ち続けているものを教えてください。
自分に自信を持つことです。僕はもともとメンタルが弱く、大きな大会の前になると急に不安になったり緊張したり、失敗することが多かったんです。結局、スタートラインに立った時に不安になるのは、やるべきことができていないなど、どこかしらにそういう不安要素があるからなんです。だから、やらないといけないことは全部やって、自信を持ってスタートラインに立つ。そこで100%の力を発揮して、負けたら負けだと。5年前からメンタルトレーナーさんについてもらって、こういう考え方ができるようになりました。これまでは、心のどこかで自分はメンタルが弱いということに気がついているけど、認めたくないという葛藤があったんです。でも、それをまず認めること。そして行動に移すこと。これだけで大体7割ぐらい解決する、と教えてもらいました。自分の弱い部分を認めるのは難しいことではありますが、ちゃんと認めて、その上で自信を持つこと。気持ちで負けないことが大事だと思います。
藤川拓也
Takuya Fujikawa
1992年12月17日生、広島県庄原市出身。世羅高校では、2009年 第60回全国高等学校駅伝競走大会の総合優勝のメンバーに。2015年は青山学院大学の主将として、東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)に出場。念願の同大学史上初の総合優勝へと導いた。同年、中学時代からの憧れだった中国電力陸上競技部に入社。
【中国電力陸上競技部】
1989年4月に駅伝愛好者3名と新入社員4名により、中国電力初のシンボルスポーツとして創部。2003年には油谷繁・尾方剛・佐藤敦之の3選手が「世界陸上パリ大会」に出場し、日本チームがマラソン団体で金メダル獲得。2004年にはニューイヤー駅伝で初優勝を飾り、まさに全盛期を迎えた。近年はランナーズスクールを開催するなど、地元スポーツ界にも貢献している。
本取材にご協力いただきました中国電力陸上競技部の関係者の皆様、本当にありがとうございました。