COLUMN / INTERVIEW コラム・取材記事
広島県における観光とスポーツの融合
広島県観光連盟(以下、HIT) チーフプロデューサー 兼 常務理事事業本部長を務めております、山邊昌太郎です。
広島の観光地というと、広島に住む皆さん、そして広島出身の皆さんは何を思い浮かべますか。多くの人は平和記念公園、または宮島とお答えになるでしょう。
広島のスポーツというと、何を思い浮かべますか。同じく多くの方が、広島東洋カープ、サンフレッチェ広島をはじめとする、野球やJリーグなどの球団やクラブをイメージされるでしょう。
もちろん、長く親しまれている観光地やスポーツは、なくてはならない大切なものです。しかし広島には、大きな成長が期待される観光産業やスポーツ産業が他にもたくさん存在しています。我が街、広島における観光とスポーツの可能性や課題について、ぜひ皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
圧倒的顧客志向で新たな観光商品を
広島生まれ広島育ちの僕は、高校を卒業後、京都大学へ進学。新卒で(株)リクルートに入社しました。新規事業開発、リクナビをはじめとする求人誌編集長を経て退職。複数の事業会社に関わったのち、2016年にカルビーの新商品開発拠点「Calbee Future Labo」立ち上げのため、30年ぶりに故郷広島へ戻ってきました。
2020年4月からHITに勤務。県の方から「既成概念なく、広島の観光について考えてほしい」とお声がけいただき現職に至ります。
仕事を進めるうえで僕が大きく影響を受けたのは、新卒で入社したリクルート時代です。その当時は、今のような「いい会社」ではなかった笑。しかしリクルートには「圧倒的当事者意識」や「自ら機会を創り出し機会により自らを変えよ」という言葉が、社訓として掲げられていました。自分で考え、自分でチャンスを作り、自由な意見を交わし、変革を起こす。社会人として成長する土台が形成されたと思います。
そして、リクナビという媒体を作る過程におき、顧客思考に目覚めました。サービスは支持してくれる人がいるからこそ成り立っていると強烈に感じたのです。
あらゆる事業を経験し「圧倒的顧客志向」が僕の旗印となりました。極端にいうと、僕の考えが全てではなくお客様の意見が全て正しいという前提で、物事を判断。もちろん僕自身の意見も発し議論も行いますが、判断基準にカスタマー動向を大切にする意識が、現在も非常に強く根付いています。
その考えを軸に、HITが広島にできることを常に考え行動しています。
新プロダクトで広島の魅力アップ
HITは広島の観光をグイグイと推進する組織です。たくさんの人に広島に来ていただき、広島のあらゆる場所や食を堪能し、宿泊をして楽しんでもらうことが最大のミッションになります。
新たな広島の観光事業確立のため、掲げたコンセプトが、リピータブルな観光を実現すること。つまり広島を何度も来てもらえる観光地にしたいのです。
広島の観光には、泊まってもらえない、そして何回も来てもらえないという問題があります。先に述べた平和記念公園と宮島、その2つを見たら広島の旅は終わり、旅行客は福岡や大阪に移動してしまうのです。今年行ったから来年もまた平和公園に行こうともなりません。せっかく新規の旅行客が来る象徴的な場所があるのに、その後に続かないことが広島の最大の弱点なのです。
そこで、リピータブルな観光を実現するための戦略が、「ロングテール戦略」。100万人が来るスポットを1カ所作るよりも、1万人が熱狂する場所を100カ所作ろう、そう呼びかけています。ある層にとっては興味を持たれなくとも、誰かが熱狂的に支持する魅惑の名所をたくさん作りたいのです。お酒好きが集まる地区、アニメの聖地、良質な温泉が湧く場所など、マニアにはたまらないスポットが広島にはたくさんあります。1万人といっても多く思えるかもしれませんが、365日で計算すると1日30人です。1日30人が来る観光スポットは、僕たち広島の人が知らないだけで、県内にたくさん存在しています。これを、「Amazonよろしくロングテールな観光地作り」と呼んでいます。
広島を一度離れた僕も、地元の素晴らしさを再発見することが多々あります。広島県民が当たり前すぎて気づかなかったことが、県外の人から見ると魅力的なものに溢れていることが大いにあります。その魅力を再編集することによって、支持されるプロジェクトをたくさん作っていくこと。昨年からのコロナ禍で、あらゆることがスムーズに進みませんでしたが、逆にその時間を使い、足場を固めようと前向きに取り組んできました。