コラム

県民「イチ運動・スポーツ」で健康寿命を伸ばす!

広島大学大学院医系科学研究科(医) 客員准教授 日本健康運動指導士指導士会広島県支部副支部長 松本直子

ウォーキング・フィットネスなどの運動・スポーツを活用した取り組み

最近では、ウォーキング等を行なっている人が多くなり、冒頭に述べた調査では、「取り組みたい運動・スポーツとしてウォーキングやフィットネス」が上がっています。以前は「手を振って背中を伸ばしてウォーキングする事が恥ずかしい」「歩く道の整備、運動をおこなう施設や環境が整っていない」などがあり、健康・運動スポーツが楽しく継続的に行えるような仕組みや環境づくりを、自治体や企業の方と限られた予算中で考え、取り組んでいました。

そのような中、厚生労働省国保モデル事業にとして、地域住民200名を対象に3年間における「有酸素運動と筋力づくりトレーニングを中心とした運動指導における生活習慣病発症予防」を実務実施者として実施することとになり、「ウォーキングと筋力トレーニングを含めたトータルなフィットネストレーニング」の普及に力を注ぎました。病気の発症予防の検証は勿論ですが、様々な波及効果も検証するので、血液検査、心肺持久力、筋力、動脈硬化指数や健康度、幸福度などなどあらゆるデータを基に「運動プログラム」を一人一人に作成し、指導を行いました。今では「わがまち健康スポーツ」としてウォーキングとフィットネスが定着し、他のスポーツへの関心や運動ボランティア活動、地域の人の健康寿命の延伸へと繋がっています。これは、地域住民や関係者と一体となった事が成果に繋がったと思っています。

(左:田中純子教授,右:故・衣笠選手)

大学・大学院などでの講義を行うことになったきっかけは、先に述べた「有酸素運動を中心とした運動における生活習慣病発症予防」について「運動における心肺持久力(最大酸素摂取量向上)との関係」によるエビデンスを出したことで、広島大学副学長であった河野修興教授(現:広島大学名誉教授・広島都市大学学長)、田中純子教授(現:広島大学大学院医系科学研究科疫学・疾病制御学)により、予防医学健康指導としての運動・スポーツの道を拓いていただいた事にあります。運動・スポーツによる心肺持久力の向上に関しては生活習慣病の改善はもちろんですが、スポーツ選手の基礎トレーニングでは必ず用いられるトレーニングプログラムなので、みなさんに取り組んでいただきたいです。

県内自治体や企業・民間運動施設、保健センター、リハビリ施設などにおいて、幅広い年代を対象に、ウォーキングやフィットネス、トレーニング、森林ヨガなどをエビデンスに基づいた健康運動・スポーツとして普及指導を行っています。また、ウォーキング大会、健康経営、健康計画のアドバイスにも携わる中、地域における運動ボランティアの育成と活動をサポートする形で「広島県市町運動リーダーサミット交流会(現在、二市二町参加」を開催しています。

スポーツ王国広島は「広島県民の健康」があってこそ

SAHは「地域のスポーツ資源を活用しながら、それぞれの地域における目指す姿を実現するために」という大きな旗を上げてスタートしました。

多くの人の応援があるからこそ、選手はそれに答えようとしますし、自分やチームのモチベーションを上げることが出来ます。地域で暮らす人は、その姿を見て、地域がひとつになることや、心や体にエネルギーが湧いてきます。「施されたら施し返す」(笑)ではありませんが、人と人が繋がり交流しながらおこなう運動・スポーツの相乗効果は計り知れません。

長く愛されるスポーツとして応援され、地域に根づき、人々の生活の一部となるには、そこに暮らす多くの人たちの健康があってこそではないでしょうか。自治体・企業・選手・地域の人・指導者などが、熱意を持って協力コラボし、運動・スポーツによる健康づくり、人づくりと環境、仕組みづくりを行うことが目指す姿の実現につながると考えています。

「運動・スポーツは、人づくり、町づくり、地域づくり、目指す姿の実現」

この時代だから、今だからこそ出来ること

最近では、徐々にコロナ前の状況に戻りつつありますが、全世界がコロナ禍の中の中にあり、プロスポーツ、競技スポーツは中止や自粛をしなければならない状況に置かれています。そして、そのスポーツを支える地域の人の「運動・スポーツ活動や健康スポーツ」までもが中止や自粛となりました。私自身も運動指導者として、今、この時代に何が出来るだろうと毎日考えました。そして「健康や運動・スポーツ」への関心が非常に高まる中、今だからこそ、その必要性や、大きなプラスの影響を伝える事だと考えています。地域の人の笑顔を戻せるように、県民「イチ運動・スポーツ」ひとりひとりが地域スポーツに親しめ、何らかの形で関われるように、経験したノウハウを最大限に活かして、広島を運動・スポーツの力でもっと笑顔にしていけるように活動を行ってまいります。
広島県民のみなさん、一緒に活動していきましょう!
 
「広島の人は どんな時も 笑顔で 心が温かく そして優しい」


松本直子

Naoko Matsumoto

広島大学大学院医系科学研究科(医) 客員准教授

日本健康運動指導士指導士会広島県支部副支部長

広島県スポーツ政策アドバイザー